研究室を知る
ご挨拶
京都工芸繊維大学分子化学系 化学工学研究室(熊田グループ)は常にオープンです。研究室見学、進学相談、共同研究や学術指導などに関するお問合せは常に歓迎します。
私たちは、抗体が有する分子を認識し結合する力、すなわち「バイオアフィニティ」を引き出し、最大化し、これを社会実装することを目標に工学研究を行っています。また、熊田がこれまでに海外の大学等で学び、習得した最先端の技術やマインドセット等を積極的にグループの教育に取り入れています。そして、自分自身の個性を尊重し、自分の才能を発掘・最大化しながら世の中に貢献できる研究者・技術者の育成を行っています。研究を通じて共に成長できることを楽しみにしています!
熊田陽一について
私の研究が目指す未来は、「誰もが病気で苦しむことがない世界を作ること」です。 すべての人が自身の病気や健康状態を体温計のように手軽にチェックでき、症状に応じて自分に最適な治療薬を選択できる世の中を実現できれば、健康で自分らしい生き方にフォーカスして人生そのものがより充実していくと考えています。さらにはコロナウイルスのようなパンデミックが起こった際にも、検査薬や治療薬の早期開発が可能であれば、より多くの命を救うことができます。
学生時代に抗体の魅力に取りつかれ、それを社会還元する工学研究に従事しながら20数年が経ちました。「抗体の固定化」という地味なテーマを色々な角度からずっと研究しています。この間、大きく進んだ研究もあれば、依然なかなか前に進まない研究もあります。途中で何度も挫けそうになったことももちろんあります。研究費が少なくて流行りの研究テーマに移ってみようかと心が揺さぶられたことも何度もあります。しかし、20年以上経った今では、一つの大きな研究テーマを色々な角度からしっかり深掘りしてきて本当に良かったと実感しています。
大学で同じテーマで長年研究を続けているとおぼろげながらに見えてくる世界があります。長く続けている人にしか分からない、理屈で説明するには少し難しい、この分野の本質な部分です。実は、実験の当事者は肌感覚でなんとなく感じている「ノウハウ」がこの分野の研究には沢山存在します。教科書に載っていないことが起こるのは日常茶飯事ですし、教科書で習ったことや世間一般的な定説とは反対のことがよく起こります。それらを仮説を立てて学術的に解き明かし、その成果を実社会に共有していくことが私の使命であると考えています。
私が大学での教育研究において大きな喜びを感じるのは、良い研究成果を挙げたときでは実はありません。(それはそれでうれしくないと言えば嘘になりますが。)むしろ逆で、自分の研究分野において大きな課題を見つけてしまったとき、すなわち、大きな壁にぶち当たった時です。研究を行うべき課題があるということは、自分自身が世の中に対して貢献できる領域が残されていることを意味します。そして、その課題解決に自分の残された時間(命)を捧げることに私自身はとても幸せを感じています。
私の専門分野は生物化学工学という学問の中でも非常に狭い「バイオアフィニティ」という領域ですので、世の中に与えるインパクトはとても小さいです。それでもそれら課題を当研究グループに入ってきてくれた学生さん、関わってくださる共同研究者の皆様と共有し、少しでも解決に向かうように試行錯誤と考察の日々を送っています。寝ても覚めても研究、研究、研究、貢献、貢献、貢献です。
研究を進めていくと、色々なことが起こります。現代の技術では到底解決できない領域を研究していたことが分かった時などは、今までかけたお金と労力が・・・・という感じで大きな落ち込んだりストレスを受けてしまうことも多々あります。そんな時、私は自分自身に、そして、グループの皆さんに「あなたが費やした時間や労力(すなわち命)は、全て世の中の役に立っているから安心してください」という声がけをしています。我々のグループの中で、短期的に見て、一見「失敗だ」とか「意味がない」と思ってしまう結果であっても、長期で見れば人類が行った貴重なチャレンジであり、実験データや研究成果はどのような結末となろうが人類の宝であることは間違いありません。長期的に見れば良いも悪いもないのです。(気持ち悪いと思われるかもしれませんが、私個人的には、これまで行ってきたチャレンジの全てが愛おしくて仕方がありません。)
今の時代に評価されなくても、別の時代に違う専門分野の人が見れば「おもしろい」「価値が高い」「これは〇〇に利用できそう」と思えるかもしれない。今は結果を理解できなくとも、10年後、ある日突然突破口が開けることもある。それは、自分の命が果てた後かもしれませんが可能性はゼロではない筈です。そのような期待が持てた時点で、我々がやってきた研究は大成功であると言えます。我々の生きている間に解決できる課題は少ないかもしれませんし、評価されることはもっと少ないでしょう。回り道することも、同じところを堂々巡りすることも多々あります。それは意味がないことでしょうか?1回やって納得できず、2回やってもダメで、10回目やってやっと確信に至ることだって多々あります。私が言いたいのは、それはそれとして、無駄ではないということです。やっている本人が無駄だと思ってしまえば無駄になってしまうんでしょうけれど、私はそうは思っていないので、データを残しておけば絶対に何かの役には立ってしまうと確信しています。このような考えから、当グループでは、我々が日々行っている教育研究で得られた誰の役に立つのかもわからないデータを「Lablog」として、できるだけ社会に共有することを積極的に行っています。
天変地異や疫病など、これまで人類は何度も滅びそうになり、それらをなんとか克服し、発展してきました。それは、人類が答えのない問いに対して考えることをやめず、試行錯誤し、失敗し、失敗からも学び続け、そして絶え間ないチャレンジを続けてきたからだと思います。我々が世の中に対してチャレンジできること、貢献できることは小さな事かもしれませんが、その小さなピース一つ一つがつながって成立している社会であることも事実です。一人一人が自分の才能を認識し、自分の役割を考え、情熱を持って人生を全うすることではじめて社会がよくなっていくと考えています。
当研究グループの教育研究活動に少しでもご興味がありましたらお気軽にご連絡いただけると幸いです。
学歴
- 2000年03月 愛媛大学工学部応用化学科卒業 学士(工学)
- 2002年03月 神戸大学大学院自然科学研究科応用化学専攻修了 修士(工学)
- 2005年03月 神戸大学大学院自然科学研究科資源エネルギー科学専攻修了 博士(工学)
指導教員:加藤滋雄 先生(神戸大学名誉教授)
職歴
- 2005年04月〜2007年2月 日本学術振興会, 特別研究員(PD) (受入機関;岡山大学)
- 2007年03月〜2007年4月 京都工芸繊維大学物質工学部門 助手
- 2007年05月〜2011年3月 京都工芸繊維大学物質工学部門 助教
- 2011年02月〜2014年1月 京都工芸繊維大学生体分子工学部門 助教
- 2014年02月〜現在 京都工芸繊維大学分子化学系 准教授
(この間、改組により生体分子工学部門、生体分子応用化学部門および分子化学系に所属変更)
海外での研究歴
- 2006年 University of Natural Resources and Applied Life Science (Austria), Visiting Scholar(Prof. Alois Jungbauer)
- 2016年 University of Texas at Austin (USA), Visiting Scholar (Prof. George Georgiou)
- 2022年 Ca’ Foscari University of Venice (Italy), Visiting Scholar (Prof. Alessandro Angelini)
受賞歴
- YABEC Award for Best Poster Presentation(YABEC, 2004)
- Third Place Poster Award(American Electrophoresis Society, 2007)
- Outstanding Paper Award 2006, J. of Chem. Eng. Japan 2006(化学工学会, 2008)
- 研究奨励賞 -玉置明善記念賞-(化学工学会, 2008)
- 生物工学研究奨励賞 -照井賞-(日本生物工学会, 2012)
大切にしているマインドセット
- 感謝と貢献。
- 自分の意見とこだわりを持つ。
- 学問の基礎を疎かにしない。
- プロとしての自覚と自信を持つ。
- 沢山の失敗の中に一握りの成功がある。
- 広く、深く研究する。
- 哲学を持つ。
- 自立する。
- 自分を満たせば、他人のために行動できる。
- 思い立ったらすぐやる、飽きるまで全部やる。
- 多様性を受け入れる。
- 競争よりも共存。
- 独占よりも分散、共有。
- Pay forward
研究室のスタイル
当研究室の特色をQ&A形式でお答えします。
各自の大まかな興味、熱意を尊重して決定します。一方で各自の希望する進路、特性(強みや弱み)、研究テーマの状況に応じて途中で研究テーマや方向性を変更することも(多々)あります。常に研究グループとして社会に何が貢献できるか、どのような役割を果たせられるかを自問自問しながら、今できる最大限の努力を行うのが私の研究スタイルです。
全体の情報共有や個別のコミュニケーションはChatworkを用いて行っています。また、毎週、研究グループごとに研究報告とディスカッションを2時間程度行っています。また、個々の研究進捗や環境・状況の違いによって個別の面談や直接指導も行います。
研究室での研究生活では色々なことに悩みが出ます。進学・就職はもちろんのこと、学士・修士・博士でどの程度の成果が求められているのか、学位取得後にどのような社会的評価と責任がついてまわるのかについても悩む方も多いようです。もちろん、研究室内外の対人関係やご家族との関係に悩む方もおられます。当研究グループでは、構成員ひとりひとりとしっかり向き合い、少しでも前向きに就学できる環境づくりを積極的に行っています。私が支援できることは小さいことかもしれませんが、小さな悩みでも勇気を出して打ち明けていただければと思います。
基本的にコアタイムは設けていませんが、午前中に来室して1日8時間程度は教育研究に従事できる時間を確保するように指導しています。
学業に支障の出ない程度であればOKですが、平日の日中は研究室のイベントが多いので避けてください。また、本学はTeaching AssistantやResearch Assistant、給付型奨学金など学生生活をサポートする体制も整っているので是非積極的に活用していただき、教育研究に集中できる環境を整えていただければと思います。
通常、7月〜8月を院試勉強期間と設定しております。
求める学生像
- 研究内容に興味を持てた人
- 研究室の指導方針に共感できる人
- 新しいアイデアをたくさん提案したい人
- ディスカッションが好きな人
- パッションがある人
- じっくり研究を行いたい人
- 工学研究に興味がある人
- Lablogの中身が知りたい人
- 海外の研究者や留学生とも交流したい人
- このHPを見てワクワクしてたまらない人
所属
京都工芸繊維大学分子化学系
応用化学課程 機能物質化学デザインコース(Dコース)
機能物質化学専攻
物質・材料化学専攻
アクセス
当研究室は、京都工芸繊維大学松ヶ崎キャンパスの12号館に位置しています。京都駅および最寄駅からのアクセスも便利ですので、お気軽にお越しください。
京都工芸繊維大学
〒606-0951 京都市左京区松ヶ崎橋上町 1番地
12号館401A
・京都市営地下鉄 烏丸線「松ヶ崎駅」出口1から徒歩8分
・京都駅から約30分
・三条京阪駅から約35分
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